出版社・製造元:旬報社
安倍晋三元首相銃撃死事件を契機に明らかになる、深刻な被害実態と密接な自民党との関係
統一教会とは何か、弁護士たちはどう被害者・信者と向き合い、その救済に取り組んできたのか
◎「旧統一教会の解散請求等を求める声明」収録
「私は、文鮮明とその周辺にいる幹部連中、それと日本の統一教会の幹部連中は加害者ですが、それ以外は全員被害者だと思っています。信者たちは、夢中で文鮮明のしもべ、つまり奴隷になって、「文鮮明が言うことが神様の言うことだ」と信じ込まされ、ほんとうに朝から晩まで、文鮮明のために闘う戦士となり、被害者をどんどん作り出している。しかし、あの信者たちも被害者なのです。」(山口広×佐高信[対談]より。山口発言)
◆「刊行にあたって」より
中心的活動の全てが違法とされた特異な宗教法人
著者らが所属する全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)は、統一協会による霊感商法の被害が多発したことを受け、1987年に、当時、300余名の有志の弁護士によって結成されました。その後、この会は、本当に長きにわたり、統一協会との戦いを続け、多くの裁判で成果を勝ち取り、被害救済に努めてきました。
とくに注目すべきは、これらの裁判を通じて、統一協会が行ってきた信者に対する伝道活動、献金や物品購入に対する勧誘活動、そして統一協会の教義において救いの中核となる、原罪を脱ぐための祝福(合同結婚式)への勧誘のいずれについても違法であるとの判断が確立されている、ということです。すなわち統一協会は、こうした団体としての中心的活動の全てが違法であるとされた、極めて特異な宗教法人ということができます。
政治家の関与の疑い
こうした実情から、我々はその被害根絶の一手段として、長年にわたり、所轄庁である文化庁宗務課に対し、統一協会に対する解散請求やその前提としての質問権の行使を求めてきましたし、名称変更に応じることのないように求めてもきました。それにもかかわらず名称変更が認められてしまったことについては、宗務課に対する信頼が大きく揺らいだものであるとともに、政治家の関与も強く疑われるところとなりました。また、これに先立つ2007年以降相次いだ統一協会関連会社に対する刑事摘発、とくに2009年の新世事件においては渋谷教会、豪徳寺教会に相次いで強制捜査が入ったにもかかわらず教会本体の責任までは追及されなかったことも、やはり政治家の圧力があったとしか思われませんでした。
歴史を振り返ると、かつて統一協会が日本に渡り、日本で宗教法人として認証された1964年の直ぐ後から、世界的な情勢も相まって、共産主義をサタン的思想として敵視する統一協会と日本の政治家とが連携を図るようになり、その関係性は次第に深まっていきました。
その後、国内では1980年代に統一協会による霊感商法が社会問題化し、1990年代には合同結婚式の問題が報じられるとともに、国外では冷戦終結とともに反共の機運も削がれた結果、政治家と統一協会との結びつきは、いったんは希薄になっていたかのように見えました。
しかし、2000年頃からは、再び国会議員と統一協会の繋がりが見え隠れするようになり、2005年、2006年に安倍晋三元首相が連続して統一協会の関連団体であるUPF(天宙平和連合)のイベントに祝電を出すなどし、他の国会議員も統一協会関連のイベントに祝電を出したり、機関誌に登場したりということが増えていきました。2018年、2019年には全国弁連から、全ての国会議員に宛てて注意喚起を行いましたが、これによって政治家が統一協会と縁を切るということはなく、一層関与が加速しているような状態でした。その最たるものが、安倍元首相が2021年9月に統一協会関連団体であるUPFの大会にビデオレターの形で登壇し、統一協会トップである韓鶴子を賛美する言葉を述べたことでした。
こうした政治家の統一協会への関与が、結果として安部元首相への銃撃事件を引き起こす一つの契機となってしまったことについて、統一協会問題について多くの情報を有していた我々としても、この問題への注意喚起が不足していたという反省があります。だからこそ、この機会に、多くの人に、統一協会による被害の悲惨な実態を知ってもらいたいと思うのです。
●著者紹介
全国霊感商法対策弁護士連絡会
山口 広(弁護士・代表世話人、東京共同法律事務所)
川井 康雄(弁護士・事務局長、田村町総合法律事務所)
阿部 克臣(弁護士・リンク総合法律事務所)
木村 壮(弁護士・東京共同法律事務所)
中川 亮(弁護士・東京共同法律事務所)
久保内浩嗣(弁護士・田村町総合法律事務所)
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佐高 信(評論家)
著者・訳者など:全国霊感商法対策弁護士連絡会
ISBN:978-4-84511777-2