出版社・製造元:小学館
人は人を真に愛することができるのか――。
高校教師の南慎一郎は、妻子がありながら、同僚である藤島の妻・美枝子に心惹かれている。美術教師の藤島から手ほどきを受け、美枝子をモデルに描いた絵が日展初出品にもかかわらず協会賞を受賞。同時に美枝子を描いていた藤島の絵は落選となっていた。それから一年、一緒に出かけた峡谷で藤島が謎の死を遂げる。不慮の事故か、他殺が、自殺か。その死に関して嫌疑をかけられる慎一郎。やがて、美枝子、慎一郎の妻・由紀、姪の雅子らを含めたそれぞれの人生が絡み合い、思わぬ方向へと動き出していく。
藤島はなぜ死ななければならなかったのか。果たして、人は人を真に愛することができるのか。嫉妬、疑念、罪、欲、エゴイズム。良識を持って誠実に生きているような者の内にも巣くう不条理さや身勝手さ。人間の本質を鋭く浮かび上がらせた問題作。
著者・訳者など:三浦綾子
●三浦 綾子:みうらあやこ●
1922(大正11)年、北海道旭川市生まれ。17歳からの7年間、小学校教師として軍国教育に献身したため、戦後に罪悪感と絶望を抱いて退職。その後、結核で13年間の療養生活を送る。闘病中にキリスト教に出会い、洗礼を受ける。1959年、生涯の伴侶・三浦光世と結婚。1964年、朝日新聞の懸賞小説に『氷点』で入選し、作家活動に入る。一貫してキリスト教の視点で「愛とは何か」を問い続け、『塩狩峠』『銃口』『道ありき』など数多くの小説、エッセイを発表した。1999年逝去。
ISBN:978-4-09406284-x
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