出版社・製造元:小学館
神を愛し、ひたすら人を愛した男の軌跡。
人のため、伝道のためにその身を尽くした西村久蔵。神に愛され、神を愛し、そして人をひたすら愛したその生涯を、自らも久蔵の大きな愛に導かれた三浦綾子が辿った感動の伝記小説。
明治三十一年小樽に生まれ、札幌で育った久蔵は、中学時代にキリスト教と出会い、数えで十八歳のときに受洗する。その後、札幌商業学校の教師として生徒たちと真剣に向き合い、創業した洋菓子店ニシムラでは事業主として多くの人たちに働く場を提供、頼ってくる者はどんな人でも拒むことなくいつでも大きな懐に招きいれた。「人の世話をするならば、とことんまでするべきだ。九十九パーセントではなく百パーセントするべきだ」。
キリスト者でありながら、戦争に反対せず招集に応じて戦地に赴いた身を悔やみ、戦後は会社を抱えながら、教会への奉仕、伝道、病気見舞い、さらには引き揚者のための農村建設へと精力的に取り組んでいくが……。
よく泣き、よく叱り、よく怒りもした。しかし、裏切りにあっても人を憎むことはなく、人を信じ続けた。なぜ、そんなにも深い愛を注ぎ続けられるのか。その大きさ、暖かさは、時を経ても多くの者の心を優しく包む。
著者・訳者など:三浦綾子
●三浦 綾子:みうらあやこ●
1922(大正11)年、北海道旭川市生まれ。17歳からの7年間、小学校教師として軍国教育に献身したため、戦後に罪悪感と絶望を抱いて退職。その後、結核で13年間の療養生活を送る。闘病中にキリスト教に出会い、洗礼を受ける。1959年、生涯の伴侶・三浦光世と結婚。1964年、朝日新聞の懸賞小説に『氷点』で入選し、作家活動に入る。一貫してキリスト教の視点で「愛とは何か」を問い続け、『塩狩峠』『銃口』『道ありき』など数多くの小説、エッセイを発表した。1999年逝去。
ISBN:978-4-09406208-x
ブンコ アイノキサイ